今朝は雨、珍しく8時前まで寝坊したので、散歩はなし。朝飯を食いながら、日経の電子版を読んでいたのだが、コラム「春秋」の記事が目にとまった。NATOといえば、北大西洋条約機構のことなのだが、海外の国際会議では、日本企業のことをこう揶揄することがあるらしい。つまり、Not Action, Talking Only (言うだけで実行せず)ということだ。
どうやら「決められない」のは、政治だけではないらしい。社長や会長がクビを揃えた海外視察や商談会で、日本企業は「持ち帰って検討する」という回答が目立つという。海外企業との交渉でもそうだ。社長や会長ですらそうなので、下っ端(たとえば部長級とか)が出る会議だとなおさら。すべて日本にお伺いをたててから、となるらしい。海外から見ると、これはきわめて奇異に映る。その場にいる限りは、最低限の権限は委ねられているはず。まして、それが企業のトップであれば、その場でなんらかの決断をできるはず。たぶん、それが世界の「常識」だ。
日本は昔から「合議」を尊ぶ国だ。これは、たとえば独裁者のようなものが、独走、大失敗して災厄をもたらすことを防ぐ、という意味ではある程度機能している。だが、合議には時間がかかる。現代のように、すべてがスピードアップしている時代において、決断に時間がかかることは致命的だ。
私は、「合議」を尊ぶという風土を変えろというつもりはない。最近、こうした短絡的な思考も見られるが、それは「いつか来た道」である。しかし、これだけ価値観が多様化している中で、合議を尽くすことは、ほぼ不可能だ。どこかで誰かが決断しなければ、合議プロセスはどんどん遅滞する。その決断こそが、トップの仕事(ここでいうトップは、社長だけではない。たとえば、その部署を任されている責任者すべてを意味する)なのだ。もちろん、それには責任が伴う。つまり、リスクを負うことになる。しかし、このリスクを負わなければ、リターンとしての「ビジネスの成功」はありえない。
今の日本人は、みんなリスクを負わないことを、良い生き方だと思っているフシがある。私はこれが今の日本停滞の根本的な理由だと思っている。問題はリスクを背負うことでは無く、リスクにうまく対処出来ないことだ。生きていく限り、ビジネスをしていく限り、リスクを負わないわけにはいかない。とすれば、その大きさに応じた対処のしかたを学ぶ必要がある。ゲーム理論で「ミニ・マックス」戦略というのがある。想定される最大リスクを最小にすることを前提に、意思決定をするという戦略だが、全員がその戦略にたってしまうと、ゲームはきわめてつまらないものになる。このような世界では、ある程度、リスクを大きめにとって、万一失敗した場合のリカバリーを含めて計画を立てる者が、最終的に勝利する可能性が高い。
情報セキュリティがともすれば、とにかくリスク最小化という「原理主義」に陥ってしまうように、ビジネスの世界も、本来の目的である「利益を得て、ビジネスを拡大する」という基本に立ち帰らなければ、方向を見失ってしまうだろう。そのために、リスクをとりつつ、それととどう向き合っていくのかが重要なのである。
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