そろそろおわかりかもしれないが、クラウドの基盤となるシステムとは、要するに「大は小を兼ねる」ようなものである。IaaS, PaaSはいわずもがな、SaaSにおいても、それが汎用的なビジネスツールやシステムに必須の「汎用部品」として使えるようなものであれば、同じである。
そもそも、「パブリック」「コミュニティ」「プライベート」といった区分けで、インフラに必要な条件はまったく差異がないだろうと私は考えている。アクセスコントロールの良しあし、といった問題もあるが、それは本質ではない。なぜなら、パブリッククラウドでも、しっかりとしたアクセスコントロールの仕組みは、少なくともコンセプトとしてあるからだ。もちろんその実装レベルには差はあるのだが、しかしその違いはそう大きくはないと思う。
強いていうなら、ユーザまたはそのグループがより低いレイヤで分離されているかどうか、つまり隔壁の高さや強度が違うのかもしれないが、少なくとも「クラウド」にふさわしい、スケーラビリティと低コストを求める前提であれば、それも問題の本質ではない。
ここに、もうひとつの「まやかし」が潜んでいる。「インターネット」「共有サービス」「低価格」といったキーワードの裏に潜む漠然とした霞のような不安感を、ことさらに煽る動きがあるからだ。「セキュリティ」が問題だ、という人たちも多いが、では、この「セキュリティ」とは何だろうか。これも騒がれているわりには意外と整理されていない。クラウド否定論者を問い詰めてみると、最後には彼らの言うセキュリティは、単なる技術的な切り口のいくつかに断片化されてしまうことが多い。木を見て森を見ず、というのが私の彼らに対する意見だ。
次の章では、この「セキュリティ」について、じっくりと考察してみよう。
(2章終)
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