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雲をつかむ話(2章-6)

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IaaSが、インターネットにおけるISPだとすれば、PaaS(Platform as a Service)は、さながらクラウド基盤の上に構築されたレンタルサーバやホスティングサービスだろうか。いささか、この定義はIaaSともかぶるが、大規模分散と仮想化環境の提供がIaaSだとすれば、PaaSは、その上に作られた個別のホスト環境や、そのうえで、様々なサービス構築のためのツールを提供するようなサービスだと言える。

PaaSのレベルは様々だ。有名なところで言えば、Amazonは、個々の利用者に仮想マシンつまりOSを載せる環境を提供できる。そのぶん、スケーラビリティはある程度制限をうけるものの、利用者の自由度は高く、様々なソフトウエアをその上で動作させることができる。一方で、Google が提供する Google Appエンジンは、Webサーバとそのうえでアプリケーションを構築するための Python による開発環境と様々な Googleが提供する機能やアプリケーションへのAPIを提供している。できることは制限されるが、この環境自体がGoogleの大規模分散環境にのっかっていることから、アプリケーションを変更することなく、小規模から超大規模のサービスまで柔軟に対応できるのが特徴だ。つまり、自由度とスケーラビリティの間には逆相関の関係がある。利用者は、これをうまく使い分ける必要がある。たとえば、自社やそのグループ、その他中小規模のコミュニティレベルに独自仕様のサービスを提供するような、いわゆるプライベート、コミュニティクラウドサービスの構築は、自由度の高い環境を、一方で、コンシューマのような大量の利用者を相手にするSaaSなどのパブリッククラウドサービスを提供するつもりなら、スケーラビリティを選ぶことで、必然的にどちらの形態を選べばよいかが決まる。もちろん、料金は定額から従量制、その組み合わせまで様々だから、これも考慮に入れてサービスを選択する必要がある。

PaaSは、そのレベルによって差異はあるものの、ユーザが自分たちの仕様で自由にアプリケーションを構築でき、なおかつ自分たちが構築したレイヤより下の運用は意識する必要がないため、運用コストの大幅な低減に役立つ。一般に、情報システムを構築、導入する際のコストインパクトは、基本的に減価償却対象である初期投資と、毎年発生する運用コストにわかれ、前者はB/Sつまり貸借対照表上の資産として、後者はP/L(損益計算書)上のコストとして取り扱われる。資産は複数年度で償却され、単年度予算(P/L)へのインパクトは相対的に低いのに対し、運用経費はそのまま単年度のP/Lにインパクトをあたえる。企業のIT部門が運用コストをより削減しようとするのは、そういう理由からだ。特に昨今のような経済状況下で、単年度のP/Lが重視されるような時はなおさらである。これが、大手企業をしてまで、クラウド化に走らせる理由だとしたら、ある意味で、一般企業が利用するのは、基本的には、このPaaSから上のレイヤでなくてはならない。私は、このあたりの整理をあえて、あいまいにする「まやかし」が今の「自称」クラウド事業者の一部にあるのではないかと危惧している。

(続く)

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このページは、風見鶏が2009年12月20日 08:12に書いた記事です。

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