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雲をつかむ話(2章-5)

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ただ、寡占化がすべて悪というわけではない。IaaSというレベルで、利用者側の視点から見れば、これはクラウドそのものではなく、あくまでシステムを「クラウド化」するための基盤である。それは安価で信頼性が高いものである必要がある。1社で独占されるのは困るが、ある程度体力のある大手が競争している状況が生まれれば、これは利用する企業にとってはいい話だ。この基盤は、企業の情報システムの基盤となるだけではない。後で述べる上のレイヤのサービス事業者のサービス基盤としても利用できるからだ。サービス基盤として考えた時のIaaSも、やはり価格とスケーラビリティが最重要課題である。サービス事業者はこの基盤を賃借して、その上に「付加価値」としての独自サービスを組み立てて売ることになる。このレイヤでもサービス価格は低く抑える必要があるから、基盤の賃借料は安いにこしたことがない。その要求は個々の企業よりも切実だ。つまり、ここでも大手優位の構造が出来上がってしまう。

問題は、現在、乱立気味の中小データセンタの行く末だ。これはかなりお寒いものであると私は思う。大手に対抗できるスケーラビリティを確保し、価格を下げるためには、1社の努力だけではもう無理だ。彼らが選ぶべき道は、仮想化基盤の標準化と、同規模のデータセンタ事業者による相互補完のためのアライアンスしかないと思う。回線だけは借りなければいけないのがネックだが、細い(つまり安い)回線で効率よく通信できる技術もあるから、コストはある程度おさえられるはずだ。これを阻んでいるのが、仮想化環境の相互接続性である。1種類のハイバーバイザですべてそろえるのが最も簡単だが、理想的なことを言えば、仮想マシンとハイバーバイザ、そしてハイパーバイザ間のインターフェイスが標準化されるとより柔軟な構成が可能になるだろう。

ともあれ、これから投資をしてこのレイヤに参入、というのは現実的ではない。あくまで、既にどっぷりひたって、途方に暮れている中小事業者の今後の話である。

では、これから参入する事業者はどうすればいいのか。せっかくIaaS事業者が作ってくれた安価でスケーラブルな基盤があるのだから、これを利用しない手はない。クラウドにおけるIaaS事業者は、インターネットビジネスにおけるISPと同じ存在になるだろうと思う。ISPも最初は乱立したものの、最終的に淘汰が進んだ。むしろビジネスはこうした大手ISPが作った通信網の上に花開いている。これと同じ状況がクラウドでも起きると私は思っている。

 

(続く)

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このページは、風見鶏が2009年12月13日 09:05に書いた記事です。

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