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雲をつかむ話(序章)

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雲、それは不思議な存在だ。その形も色もさまざま、一面空を覆うかとおもえば、青空にポツンとひとつだけ漂ったりもする。ちょっと科学をかじっていれば、それが水や氷の粒であることくらい知っているはずだ。もうひとつ言えば、雲ができるためには、水蒸気が水滴になるための核がいる。しかし、核があっても、空気の流れがなければ雲はできないだろう。雲は空気の流れのよどみや、境目、空気のかわり目に生まれる。それは、その場所で空気が変化していることを示している。

飛行機に乗って、雲をかすめると飛行機が揺れるのは、雲のせいではなく気流が乱れているからで、雲はその副産物なのだ。いい方を変えれば、雲はそこで何か変化が起きていることを示す空の標識でもある。

話は飛ぶのだが、私は飛行機が大好きだ。飛行機に乗って窓からの景色を見ていると、飽きることがない。だから、必ず窓側席に座る。それがたとえ、国際線の長時間フライトであってもである。飽きない理由のひとつが雲だ。雲はひとつとして同じ形がない。人間の顔と同じで分類はできても、まったく同じものができる確率は極めて低い、というかゼロに限りなく近い。

雨の日に飛行機に乗るのもまた面白い。一面黒雲に覆われて、大粒の雨が降っている飛行場を離陸すると、意外なほどすぐに雲の上に出てしまうことも多い。雨を降らせる雲の多くは、積乱雲を除けば低層の雲だ。だから、飛行機がエンジン推力を少し絞ってフラップをたたむころには、雲の上に出てしまう。

でも、前線が通過しているような時は、そう簡単には雲から抜けられない。雲は何層にも重なっていて、ひとつ抜けても、まだ上に厚い雲が覆いかぶさっている。青空を見るには、3層くらいの雲を抜けなければいけないこともある。ときには巡航高度近くまで雲がたちこめることもある。国内線では7000mくらいの高度を飛ぶ路線もあるが、結局、最後まで青空を見られないことだってあるのだ。国際線でも時々、40000フィート以上を飛びながら、雲すれすれの飛行・・・ということもある。

飛行機から見て一番壮観なのは、雲の谷間を飛行している時だ。特に、夕陽や朝日の中では、思わず見とれてしまう。多少揺れようが、かまわない。落ちさえしなければ・・・。

さて、季節は秋。秋の雲も面白い。秋晴れの空にぽつんと浮かんだ雲。しばらくの間にどんどん形をかえ、やがて消えていく。ふと、昔、マイコンで流行ったライフゲームを思い出した。周囲に雲がなければ、やがて雲は消える。雲が多すぎれば、やがて雨となり、やはり消える。雲が雲であるためには、3次元的に見て適度な広がりが必要だ。もちろん雲は、大気の変化の仮の姿だから、これは見かけの現象であり、本質ではないだろう。しかし類似性はあるし、それはその本質を知る手掛かりにもなる。だが、雲の本質を知るには、その様々な姿に騙されないようにしなければいけない。それは、雲の中にある何かの、ひとつの切り口に過ぎないのだから。

こんなことを考えていると、なんとなく雲という物体は、様々な意味で示唆に富んでいるように思えてくる。そんな様々な切り口を重ね合わせてみると、なにか本質らしきものが見えてきそうな気がするのだ。

さて、これからの話は大気現象としての雲の話ではない。「雲」という名のついた、やはりつかみどころのない仮想空間における現象の話である。しかし、奇妙なことに、それはここで書いた雲とよく似た性質を持っているように思える。この仮想世界の雲をこれから、いろんな切り口で見ていこうと思っているのだが、本物の雲が暗示するものとの類似性を考えてみるのも、ちょっと哲学的で面白いかもしれない。

さておき、そろそろ本題に入ろう。なお、これから書くことは、私の個人的な思い込みだ。でも、なにかしらの本質に近づいていくものだと自分では思っている。そして、これは使い手の目線から見たものでもある。なぜ、「雲」は生まれたのか。それはどこから来て、どこへ行くのか。それは、地上に何をもたらすのか・・・。敢えて独断と偏見をもって書くつもりだ。

(続く)

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このページは、風見鶏が2009年10月19日 21:10に書いた記事です。

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