うとうとしながらBBCニュースを見ていたら、入ってきたのがこれ。大統領自ら、米国のサイバーインフラが脅威にさらされており、これを国家の大きな安全保障上の問題として対処する方針をアナウンスしたものです。
ホワイトハウス内に担当部局をおくほか、全体を統括する責任者(cyber czar)をおくとのことで、国家安全保障上の主要な課題のひとつとして取り組む方向性を示したものです。同時に、最近行われたサイバーセキュリティに関するレビューのレポートも発表されました。このレビューの結果として、オバマ政権はこの問題をこれまで以上に深刻にとらえて取り組むことを決めたようです。
実際、昨今、米国の軍関連のプロジェクトや電力網関連のシステムなどへの侵入事件が頻繁に報道されており、テロリストや国家情報機関の関与もとりざたされているなかでの発表は、その裏側でこうしたサイバー攻撃が、「軍事問題」に発展しつつあることを示唆するものかもしれません。実際に、大統領が国防省に対して、サイバー戦争研究の強化を指示したという報道も一部にあるようです。
我々、セキュリティ屋にとっては一見、追い風のようにも思えますが、一方でキナ臭い感じもします。はたして、サイバーセキュリティに関する情報が、これまでどおりに流通するのかどうか、という点も気になりますね。一方、攻める側も守る側も、より一層の「プロ化」が要求されることになり、我々それを専門とする人間にとっても、より資質を問われる時代になっていくのだろうなと思います。
さて、日本の政治家先生たちは、今はそれどころではないようですが、気がついたら穴だらけ・・・なんてことにならないようにしなくてはね。
CNNにも記事がでてます。
追記:
ホワイトハウスから発表されているレビューをちょっと読んでみました。70ページ以上もあるので、全部細かく読む気力はないのですが、サマリーを読んだだけでも、相当広範囲に総合的に考察されていることがわかります。要するに、レポートの結語に書かれている
The history of electronic communications in the United States reflects steady, robust technological innovation punctuated by government efforts to regulate, manage, or otherwise respond to issues presented by these new media, including security concerns. The iterative nature of the statutory and policy developments over time has led to a mosaic of government laws and structures governing
various parts of the landscape for information and communications security and resiliency. Effectively addressing the fragmentary and diverse nature of the technical, economic, legal, and policy challenges will require a leadership and coordination framework that can stitch this patchwork together into an integrated whole.
という文章が端的に表現しているように、もはやサイバーセキュリティは個別のセクターの個別の努力ではなく、全体をきちんと見据えた形でトップ(ホワイトハウスが)主導で行っていくのだという明確なメッセージなのだろうと思います。特に興味深いのは、コンピュータやネットワークの技術が、今後不可欠な重要インフラであり、それらの技術が自国のあらゆる面での優位性を保っていくカギとなるのだという考え方が徹底されていることです。つまり、これらをより有効に使うことを前提で安全性をどう確保していくか、という立場からの議論です。ともすれば、「使うことへの規制」に走りがちなどこかの国との大きな違いではないかと思います。
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