イラン騒動の陰で、インターネット上でも戦いが起きていることは、一般にはあまり知られていません。単に連絡手段としてではなく、反対陣営のサーバを攻撃したりする行為が頻発しているようです。米国の重要システムに国外から攻撃や侵入が頻繁に発生している話は、先日書きましたが、いよいよ米国防省はサイバー部隊の設立準備をはじめたようです。
これまで、ある意味、草の根で行われていた「サイバー戦争」が、国家の軍事機構の枠組みに取り込まれることで、いったい何が起きるのか。もっとも懸念するのは、リアルワールドとの関係です。現実の戦争は、残念ながら長い歴史を持ち、一応のルールらしきものも存在します。また、それらを抑止するための国際的な枠組みも存在します。一方、サイバー戦争は、いまのところ「仁義なき戦い」であるようです。軍事機関や重要インフラがサイバー攻撃のターゲットになることで、それに軍が関与し、たとえば、敵国の通信拠点にミサイル攻撃をかけるというように、実際の戦争とリンクしてしまう危険性もあるように思います。少なくとも、国家的な枠組みでサイバー「軍」を作る動きがあるのであれば、今後必要になるのは、偶発的な戦争を防ぐための国際的な枠組みではないかと思います。
極論すれば他国のシステムへの攻撃を「侵略行為」と定義し、各国がこうした行為の実行に関して国内をきちんと管理し、意図しない攻撃が発生する危険を排除できなければ、戦争のリスクはなくならないことになります。国家や軍によるネット監視、不都合な通信の排除、というような、どこかの国がやっていることを、すべての国がしなければいけない日が来るのかもしれません。
これだけネットが様々な領域で使われていることの代償は、ネットで発生したリスクが社会全体に深刻な影響をあたえかねないことです。つまり、ある国の社会に対して重大な被害が予想される以上、これが戦争行為ととられてもいたしかたありません。ネットの活用と安全保障、このジレンマが、いよいよ深まりそうです。
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